このインタビューは2017年2月におこなわれました。肩書等は実施当時のものです。
株式会社千葉銀行 取締役頭取 佐久間 英利氏
内永 佐久間頭取は、2015 J-Winダイバーシティ・アワードで「個人賞 経営者アワード」を受賞されました。私がなによりも感心したのは、ダイバーシティ推進のための"仕組みづくり"がお上手であることです。地方銀行64行を巻き込んだ「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」、地方銀行の職員のキャリア継続を支援する「地銀人材バンク」といった、自行のみならず地銀のネットワークを活かし、日本全体を巻き込んでいく取り組みは実に素晴らしいですね。
佐久間 ありがとうございます。変革を進めていくときに大切なのは、組織や業界全体で取り組むことです。そのために"仕組み"はなくてはならないものです。「地銀人材バンク」を立ち上げられたのも、「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」があったからこそ。その仕組みがなければ提案する場もありませんでしたから。
内永 他行にも女性活躍を推進したいという思いがあったのでしょうね。
佐久間 そうですね。今は地方においても、女性の活躍推進は大きな課題です。「地銀人材バンク」によって女性職員は配偶者の転勤先でも別の地銀に再就職しやすくなりましたし、地銀各行が互いに連携することで女性のキャリア支援を図りやすくなります。そうすることで女性自身のみならず、地銀界全体の成長にもつながるでしょう。
内永 そのような仕組みづくりの発想はどこから生まれてくるものなのでしょうか。
佐久間 アイディアはいろいろなものから吸収していると思います。なかでも私は中国の古典が大好きで、数多く読んできました。中国の歴史は、前の王朝の失敗を踏まえて、新しい王朝を築いていく。この繰り返しでつくられてきました。そこでカギとなるのが国という組織の動かし方。権力者個人の裁量に任せるのではなく、いかに組織を動かす"仕組み"をつくるか。それに加えて、その組織のミッションを明確に示すことも重要です。
内永 なるほど。過去の失敗に倣い改革していく上では、見える化も必要になりますね。見える化できていないと、改革しようと思っても何が課題なのか分からないわけですから。
佐久間 おっしゃる通りです。当行では、女性の管理職比率を20%にすることを目標に掲げたのですが、ある職員に「本当にできるか」と聞いたら難しいと言われたことがあります。よくよく聞いてみると、リーダー職を所定の年数務めないと次の階層である管理職に上がれないというルール(仕組み)があるからだと言うのです。ならば、その仕組みを変えようと。仕組みそのものを見直して、改善することの重要性を改めて実感しました。
内永 仕組みをつくった時は最適だとされていても、世の中は刻々と変わっていきます。仕組みも変化に合わせて見直し、変えていくべきです。
佐久間 大切なのは、その仕組みを作った、目的・ミッションの方です。この"なぜやるのか"が忘れられてしまうと、仕組みだけが一人歩きし、目的達成とはかけ離れてしまうことがあります。時流を捉えて、目的にあった仕組みにつくり変えていくことも必要ですね。
佐久間 英利 氏(さくま ひでとし)
株式会社千葉銀行 取締役頭取
1952年千葉県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、1976年に千葉銀行に入行。市場営業部長、経営企画部長、取締役経営企画部長、取締役常務執行役員本店営業部長、取締役常務執行役員を経て、2009年3月より現職。2012年6月~2013年6月まで一般社団法人全国地方銀行協会会長を務め、2017年6月に再任予定。2014年5月「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に立ち上げメンバーとして参画し、同年11月には「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」を発足し、会長に就任。
内永ゆか子(うちなが ゆかこ)
NPO法人J-Win 理事長
1946年香川県生まれ。東京大学卒業後、1971年日本IBM入社。1995年取締役就任。2000年常務取締役ソフトウェア開発研究所長。2004年4月取締役専務執行役員。2007年4月NPO法人J-Winを立ち上げ、理事長に。2008年4月ベネッセホールディングス取締役副社長、並びにベルリッツコーポレーション会長兼社長兼CEOを経て、2013年6月ベルリッツコーポレーション名誉会長を退任。