4月16日、上川陽子内閣府特命担当大臣(少子化、男女共同参画)とJ-Win「国・社会・内閣府への提言分科会」を中心に、ワーキングマザーを加えた9名のメンバーと開かれた懇談会第2回目をお届けします。司会は内閣府男女共同参画局長の板東久美子氏です。
板東局長 まず、男性の意識やカルチャーの問題がある中で、実際には女性の採用は増えてきていると思いますが、数値的に見ると辞めている女性も多い。上にチャレンジしていこうという前の段階であきらめている方が多いのですが、その点では何が一番のネックになっているのでしょうか? 子育て支援の問題だけではないような感じがします。ここを変えていかなければ難しいというところがありましたら教えてください。
上川大臣 私が就職したのは、男女雇用機会均等法がなかった時代です。子供を産み、育てながら仕事を継続していく人はほんの一部で、組織の中では極めて異例というか、あってはならないような雰囲気がありました。そんななか、私は家族や親の助けが借りられるなどの条件が整っていたので勇気を出して子供を産み、仕事を続けることができましたが、通常なら辞めます。そういう世代です。
そのとき感じていたことは、3割くらい女性が入ってくると組織は変わるということです。当時、土木とか建築関係では、深夜労働を撤廃するというようなことが議論されていました。3割女性が入ってくると、仕事のやり方を変えないと組織全体のパフォーマンスが上がらない、マネジメントの側から変えざるを得ない。量が質に変わっていかないと、一人ひとりの頑張りでうまくいくケースもあれば、いかないケースもあります。それを均等法で乗り越えようとしてきました。
先ほど三井住友銀行さんが、女性の採用が入社時は1割に満たなかったのが、今3~4割になったというお話がありましたが、これは社会がものすごい変化をしているということですね。さらに管理職までのキャリアの積み上げ方という点では、育児の問題があるのでなかなか男性のように一直線にはいかない。ある方は転職をしながらキャリアを積み上げたり、また子育てで休職しながらも、ご自分の努力で管理職まで行きつく。それはまだ極めて一部だとは思うのですが、そこのところの御苦労というか、あるいはどうはねのけてこられたのでしょうか。
糸藤 私は転職を2回しております。リクルートで96年に長男を産みました。そのとき私も育休をとって、子育てが楽しかったら辞めてもいいかなと思っていました。当時は育休中に給料の2割が給付される時代でした。しかしリクルートでアドレナリンが出る仕事をさせていただいたので、育児だけの生活のなかで仕事が恋しくなり、子育てだけで一生を終えるのはもったいないと思い、自分は何がやりたいのか、どんなふうになっていたいのか、子供と向き合うなかで改めて考え、復帰をしました。
復帰後は、どうせ働くならもっとアドレナリンが出る仕事がしたいと思い、管理職を目指します。当時はリクルートも男性中心の仕事の仕方でしたから、夜10時からミーティングが入ったりして、どんなに朝早く来て仕事をしても子供のお迎えには間に合わず、この会社で管理職になるのは難しいと思って小さな会社に転職をしました。
ですから育休のときに、仕事が自分にとってすごく大事だという実感を持てたことが、今も仕事を続けるモチベーションになっています。辛いこともありますが、そんなとき育児しかない毎日の辛さを思い出して、もう一回働くことは楽しいことである、働くことは欠かせない自分の一部であると実感しています。